第12章 【淡い夢】
―――――――死ぬ時まで。
(ああ、シェリル…)
落胆していた時だった。
アル・サーメンという組織の男が、国を訪れてきたのは…。
『あなたの願いを叶えましょう』
『運命に逆らうのです』
『彼女を…救う術を差し上げましょう』
闇の金属器なんて、どうでもよかった。
ただ、彼女を救いたい一心で。
すべてを捨てて、堕転したとしても…。
命を削られているとも知らずに、ずっと地下室に鎖で縛られ、死んでいく彼女を見たくなかった。
愛していた、シェリルを。
双子でも。兄妹でも。
だが、闇の金属器を手にし、俺の自我は薄れていった。
純粋な。遠くから見守るだけで良かった、密かな愛情は狂気に変わり、憎悪に変わり。
国民を守るはずが、傷つけ…、そして奴隷として従えた。
そんな俺に恐怖を抱き、地下室から自由になったシェリルは国から逃げ出した。
(こんなこと、望んでいない…ッ)
でも、どんなに心の底で叫んでも体は言う事を聞かない。
侵されていく、心も体も、自我も、記憶も、すべて。
* * * *
「私はシエルを殺す」
頼むよ、殺してくれ。
お前を傷つける俺なんて…。
お前の手で。