第12章 【淡い夢】
シエルside
* * * *
「サラクがシンドリアを滅ぼす気なら、私はシエルを殺す」
「…………」
「例え、故郷でも。双子でも」
涙目になりながらも、シェリルはちゃんとした声で言った。
知っていた、とっくに分かっていた。
彼女はもうこの両手に戻ってこないということは…。
けれど、欲せずにはいられなかった。
俺が堕転したと知れば、きっとシェリルは嘆く。
* * * *
【王族に双子が生まれたなら、一人を捧げよ】
捧げよ、…つまり、国の人柱として生贄にしろ、と。
それでも、殺されるよりはマシだったかもしれない。
捧げられたのは、シェリルだった。
14歳の誕生日。
彼女は王宮の地下室に鎖で繋がれ、人柱にされた。
冷たい床に描かれた、魔力を喰らう魔法陣…。
サラクの国が襲われた時、彼女の命を削って防御結界が作動するモノだった。
『シエル、私、いつ此処から出れる?』
いつも、いつも。
にこやかに床にしゃがみ込んでいるシェリルを、見ているだけしかできないのが辛かった。
彼女を縛っている鳥かご…、国から、解き放つ方法を探した。
【一度、陣の上に乗った者は出られない】