第12章 【淡い夢】
シエルside
* * * *
(ようやく見つけた、シェリル…)
俺の片割れ、大事な双子の妹。
まさか、シンドリアに身を置いていたとは思わなかった…。
まぁ、この国は難民や移民を受け入れると聞いている。
もしや、とは思っていたが…、しかも、シンドリアの王宮にいたなんて。
(…それにしても、あの男…)
『…さぁ行きますよ、シェリル』
目障りだった、殺してしまいたいほど。
この手で彼女を抱きしめたかったというのに…。
遮るように静かに横から現れた。
気のせいだったかもしれないが、手に、刃物を持っていたような…。
蛇ににらまれた蛙、そんな気分だった。
シェリルなどと…、呼び捨てて。
俺が触れることができなかった手に、いとも簡単に触れて。
アイツの視界には、あの男しか映っていなかった…。
シェリルの隣は、俺の場所だったのに…。
『シエル、ずっと一緒にいようね』
約束したじゃないか、ずっと一緒って…。
なのに、どうして傍から消えたんだ? 離れたんだ?
一度、感情が溢れ出れば、もう止まらない。
右手の薬指にはめていた指輪に、憎しみを込めて触れる。
ビィィイイ…っ
憎悪をまとった黒いルフが、俺を包んだ。