第12章 【淡い夢】
角を曲がるとすぐに、グイッとジャーファルに腕を引っ張られて優しく抱きしめられる。
だが、切なそうな感情を向けつつも、鋭い目つきで私を見下ろしていた。
「勝手に…、いなくなるんじゃないっ」
「…ごめんなさい」
「あの男がこの王宮にいる間、俺から離れるな」
あ、また昔の言葉が…、と。
少し照れて…、緩んだ表情を隠すように、口元を袖で隠して笑う彼。
まるで乙女のよう…、頬を染め、恥ずかしそうだ。
さっきの剣幕はどこへやら。
(背中からは、完全に敵意剥き出しでしたよ…ジャーファル)
私は彼のカフィーヤを掴み、口元にスッと運ぶ。
彼を愛でる純粋な行為が、さらにジャーファルを赤面させた。
切れ長の目の下を、意図的にうっすら赤く染めて見上げれば、もう彼は私の手のひらだ。
「あの…、シェリルっ?」
「ありがとう、ジャーファル」
彼の首に手を回し、グッと引き寄せてキスをした。