第10章 【奪われた幸せ】
* * * *
血だらけになった彼女の体を拭こうと、服を脱がせる。
体はまともに雷を纏っていたバララーク・セイで締め上げられたから、焼けただれていた。
右目にも、赤い紐が纏っていた微量な雷が当たってしまったため、両目一緒に包帯で巻かれている。
きっと、跡が残ってしまうだろう。
「シェリル…」
「…ぅ…あ……」
苦痛に表情を歪める彼女の頬を撫でると、その手に手を重ねてくる。
そして、無理に笑った。
「ジャぁ…ファルさ…、…ぁ。すみま、せん…主」
「ジャーファルでいいですよシェリル。痛みますか??」
「…痛いです。でも、…ジャーファルさんが帰ってきて良かった…ぁ」
彼女は私の頬に手を伸ばし、首に手を回すと引き寄せた。
私の髪が首筋に触れ、彼女は「くすぐったい」と言って微笑む。
「…ジャーファルさん。泣かないでね」
「─────っ!!」
涙を堪えきれずに泣いていた私に向かって彼女は言う。
見えていないはずなのに、まるで見えているようだった。
涙がポツリと彼女の頬に落ちる。
「…ジャーファルさん」
「すみませんっ、私のせいです!! …あなたを傷つけたっ!!」
「…………」
彼女の手が、私の服へと伸びた。