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【マギ】ジャーファルさんに愛されて。

第10章 【奪われた幸せ】




赤い紐が私の胴体に巻きついて、左目を貫いた。


ピスティさんが悲鳴のような声を上げる。
焼けた肌を、まだ電気が走っている紐が締め上げる。
惨たらしい私の姿を見て、息を飲んだ彼がいた。

「…ですが、あな…た、は…私が、忠誠を…誓っ…た主で、…じゃ、ない…」

痛みを我慢できなかった。
涙が出ると、左目の血と一緒に混ざって流れる。
涙がしみて、痛い。
それでも、ブレスを使って紐をくぐり抜け、再びベッドの上に座り込んでいる彼の顔を挟んで口を開いた。

私の口から出たのは、つんざく様な悲鳴や叫びではなく、想いを吐き出した『歌』だった。

「あなたが望むのならば、私がそれを叶えましょう。

 ただあなたは、私の隣で笑っていればいいのですから。

 誰よりも大好きです、愛してます。

 だから『ジャーファル』…私を置いていかないで」


「――――――――ぁっ」


頭を抱えて小さく声を上げた途端、黒いルフが彼の中から逃げ出すように出て行った。
倒れる彼を受け止め、私はホッと胸をなで下ろす。
目の事を思い出した瞬間、痛みはすぐに襲ってきた。

「あぁ゛あ゛あぁっ、ぁあ゛あぁ゛ッ」
「シェリルっ!!」

熱い、あつい、あつイ、アツイッ。
シンはジャーファルと私を引き離し、抱き上げて部屋を出ようとする。
痛みに声を上げている私の耳に、愛しい彼の声が聞こえた。


左目を押さえ、シンの腕を掴んで顔を上げると、ジャーファルが目を大きく見開いてこっちを見ている。
少年だった姿は元に戻り、具合が悪い様子はない。

「……シェリル…!!」
「良かった、主。…ぁ、私は大丈夫ですから、ちゃんと休んでくださいね」

シンにだき抱えられながら、私は部屋を出る。
扉が閉まるギリギリまで、彼は私を見ていた。
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