第10章 【奪われた幸せ】
私の大事なシェリルが泣いている。
なのに体が動かない、目も…開けられない。
何もできない苛立ちが、自分の中に溜まっていって惨めになっていく。
(…泣かないで……)
できることなら、涙をすくって口付けしたい。
この腕の中に納め、首筋に顔を埋めたい。
欲望が自分の中に蓄積されていき、もう首まで迫っている。
(…あぁ…眠い……)
薄れていく意識の中、私は笑っている彼女の表情を思い浮かべては、微笑んだ。
朝起きて、横で眠っている彼女の寝顔が一番好きだ。
でも、私が最後に想像したのは…。
血塗れになった自分が、彼女を手にかけた場面だった。