第8章 【愛に飢えた狂犬】
「………っ」
気がつくと、腹部に痛みが走り、起き上がるのに時間がかかった。
辺りを見渡すと、ジャーファルさんの部屋だった。
『帰ったらたっぷり説教…』
(……逃げよう…)
今置かれている自分の状況を、目が覚めてすぐに理解した。
彼は、すごく怒っていた。
『私が殺してあげますよ』
きっと、絶対殺される。
殺気染みた目を思いだし、私は腹を押さえ、壁を支えにドアへ歩き出す。
(そう言えば、ジャーファルさんは何処に───…)
ドアノブに手をかけた瞬間、右頬をバララーク・セイがかすめた。
傷口からツゥ…と血が流れる。
そのまま急いで手に握ったドアノブを回し、扉を開けるが、バララーク・セイが胴体に巻かれて倒れる。
「…ひっ!!」
「何処に行くんですか?まだ仕置きも説教も始まっていないというのに…」
「怪我がまだ痛いんで今度にして下さい!!!」
「はぁ?」
笑顔なのに、ドスのきいた声。
ズルズルと赤い紐で引きずられ、鍵を閉められた。
逃げ場のない密室。
私の拘束されている体を起こし、正面から抱きしめた。