第6章 【かけられた呪い】
「…ジャーファ、ル…」
「まったく…。シェリル、どうしてあなたは私が目を離すといなくなるんですか。…帰ったらたっぷり説教です」
笑顔なのに、口から出る言葉には明らかに怒りとトゲがある。
彼女の視線が私から逸れ、その瞬間に麻痺した指をならし、影でブレスをジャーファルさんに投げた。
視線が再び私に戻り、契約痕の腕に気づく。
「あの人間と契りを交わしたの? …その契約痕は面倒ね、消しちゃいましょう」
「ぃ゛や……っ」
「…………」
(嫌だ、嫌だ、イヤだッ…止めてッ!!)
どんなに心の底で叫んでも、悲痛な思いは届かない。
草模様を彼女がなぞると、ジュッという音がした。
彼は目を大きく見開いて、何も言わずにその瞬間を見ていた。
自然と涙が溢れ、頬を濡らす。
目から光を失った無表情の私を見て、彼は何を思っただろう。
「シェリル」
名前を呼ばれてビクッとなる。
彼の手首からも、契約痕は消えている。
ゆっくりと顔を上げた。
遠くで、鋭い眼光を彼女に向けるジャーファルさんがいる。