第6章 【かけられた呪い】
部屋をノックし、ジャーファルさんの返事を聞き、いつものように笑って、中へ入った。
体調が完全に治った彼は、すでに机に向かって書類と戦っている。
あちこちに落ちている書類を拾い、内容ごとに分類してテーブルに置いた。
「シェリル、たった今来てもらって悪いのですが、この書類をシンに『目を通すように』渡してきてください」
「分かりました、サインももらってきますね」
初めての仕事を受けて、笑みが零れて止まらない。
部屋を出て、アザのことがバレずに済んで安心した。
これ以上…ジャーファルさんに迷惑をかけてはいけない、そう思っていた。
「シン王、これ、ジャーファルさんからです!!『必ず』目を通すように、と…」
「……いよいよシェリルもジャーファルに似てきたな…」
「何かおっしゃられましたか??」
「いえ、何も」
シン王に書類を渡し、立ち去ろうとドアノブを掴んだ瞬間。
首を絞められる感覚に襲われた。
青いルフが、闇を帯びたようにじわじわと赤く変わっていく。
首元を押さえてしゃがみこむ私に駆け寄り、シン王は私を抱き上げて床に横にさせる。
「シン…王」
「喋るな、今楽にしてやる」
「ジャぁ…ファルさんには、黙って…て…」
「分かったから、もう喋るな」
首に巻いていた包帯を解き、赤黒く変色したアザに両手を向ける。
赤いルフはスッと元に戻って、首を締められる苦しみも消えていった。
起き上がると、シン王は厳しい目を私に向けてきた。
「…シェリル、お前殺されるくらい恨まれるような事したか?」
「…ないと言えば嘘になります…」
「…これはれっきとした
呪術だ」
(…アルスト師匠)
彼は完璧な呪術師だった。
標的にした人間は、一度も生きていたことは無い。
でもどうしてアルストが…、彼との契約はもう切れたはず。
それに……。
『シェリルの体を頂戴』
あれは、師匠じゃない。