第5章 師との決別…、新たな契約を。
彼が袖に忍ばせていた刃物で指先を切ってしまい、血が出る。
ずいぶんと深く切ってしまったようで、彼の服を真っ赤に染め上げた。
「痛っ……」
「シェリル、大丈夫ですか」
「大丈夫、です。ごめんなさい、服が…」
「手、貸してください」
右手を掴むと、指先は彼の口の中に入っていった。
じんじんと痛む傷口から、血が吸いとられていく。
ちゅ…と音が静かな部屋に響いた。
「これで大丈夫です。…そんな顔して、襲われたいんですか?」
「違いますっ!!!」
覚束ない手で服を脱がすと、体中に痛々しい傷がたくさんあった。
震える手で触れると、傷は死人のように冷たかった。
見える傷のすべてを指で触れ、キスを落としていく。
「……んっ」
「あなたの背負っているものを、私にも背負わせて下さい」
「シェリル…んぁっ…ぅ…」
両目を、手首を交差させて隠す彼が愛しくて。
綺麗な銀髪を、手でなびかせるように触れた。
すぐに反応してしまうジャーファルさんが、可愛い。
「はい、全部拭き終わりました。私はシン王の所に行って報告してきます」
「……はい」
赤面したジャーファルさんに含み笑いをし、手を振って部屋を出た。