第7章 さんかく
気遣い屋の彼らしくもない不自然にしつこい言及。思わず胡乱げな視線を向けると、日高くんはしまったという顔で気まずそうに目を逸らす。
「どうしたの?なんかおかしいわよ」
「……はぁ、駄目だ。全然余裕ないとか。かっこわりぃ」
唸るようにぼやき、頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
「とりあえず、幾つか確認させてもらってもいいですか」
「いいけど……何を?」
「及川さんとのことです。……まず、沙々羅さんは及川さんとは既に別れてる」
唐突に始まった質問に戸惑いながらも、思ったよりずっと真剣な顔をした日高くんに気圧されてしまう。気がつけば、ほぼ無意識の内に頷いていた。
「でもって、沙々羅さんはまた及川さんに言い寄られてる」
「……まぁ、そうなるのかしら」
「けど、それは及川さんの一方通行で、沙々羅さん自身に寄りを戻す気はない」
「そうだけど……別にそんなことどうだって」
「俺にとってはどうでもよくない大事なことなんです」
はっきりと言い切られてしまい、ぐぅの音すらでない。
な、何だっていうの一体……?
いつになく強気の日高くんにたじたじで後ずされば、何故か日高くんはその分距離を詰めてくる。
「ねぇ、沙々羅さん」
「何……っていうか、ちょっと近くない?」
「及川さんとは何でもないんだったら、俺でもいいですよね」
さらっと無視しやがった……いや、そんなことより今何って言ったこの子。
俺でもいい?
「何の話?」
「沙々羅さんを迎えにきたりする役目、ですよ。今度からは、あの人に代わって俺がやりますから」
「は?…………はぁ!?」
何がどうしてそうなった。
唖然とする私に、日高くんは何を今更とでも言いたげな表情で爆弾を投下した。
「だって俺も、沙々羅さんのこと好きなんで」