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【HQ!! 】ラブミーギミー

第2章 買い出しと再会




「影山さー、なんか湯野先輩にはスッゲー優しいよな」
「あ?何がだ?」

 隣街のスポーツショップからの帰り道。
 無事スポドリの粉末やら、必要な物を買い揃え、駅へと戻る途中のことだった。

 唐突な日向の呟きに、影山が首を傾げる。
 一方で、月島と後ろを歩いていた山口が「確かに」と頷いた。

「影山って基本的に他の先輩たちにも礼儀払ってるけど、湯野先輩には特別礼儀正しいっていうか」
「まさかデリカシーの欠片もない王様が『先輩を一人で行かせられない』なんて言うなんてね。君ってそんなに気が回せたんだ。王様、すごーい」
「あぁ!?馬鹿にしてんのか!!」

 棒読みで無感動に拍手する月島に影山がすかさず噛み付いた。
 一々大袈裟に反応するからからかわれるのに、本当に学習しないなこの子……。

「はいはい、お静かに。周りの人に迷惑でしょ」
「……うっす」
「……はーい」

 ちらほらと寄せられる視線を指摘すると、影山も月島も大人しくなった。

 ……いや、実際の所は口を閉じただけで、お互いの足を蹴り合ってるんだけど。
 歩きながらお互いを蹴り合うなんて実に器用なことだ。
 とりあえず、蹴る度にガサガサと揺れるスポーツショップの袋の中身が無事である限りは、放っておくことにする。

「で、何だって?影山が私に優しい?」
「さっきの影山、湯野先輩は絶対一人じゃ行かせないって言ってました!俺だったらぜってー『一人で行けボケ日向』って言われるのに」
「あぁ?何か文句あんのか」
「まぁ、湯野先輩は女の子だし。影山とは付き合いも長いからね。……それにしてもさっきの影山は必死だったけど」
「……ぶっ」
「ぶふぉっ!」

 山口の話を聞いて必死の形相の影山を思い出したのか、プスーと馬鹿にしたように笑う月島と盛大に噴き出す日向。

「おい、てめぇらふざけんなよ!!」

  影山は顔色を変えて日向に掴みかかった。

 その横顔はからかわれた羞恥で赤く染まって……はいない。
 寧ろ真逆の、一人で買い出しに出掛けようとする私を止めた時と同じ、青ざめた必死の形相だ。

 ……あ、コレはまずい。
 影山が要らんことを話す前に無理矢理にでも話題を転向しようと口を開いた時だった。


「笑い事じゃねーんだよ、湯野先輩の方向音痴具合は!!」



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