第2章 買い出しと再会
不安げな潔子を制して、荷物を纏める。
部室から飛び出そうとする私の背に向かって、澤村が「ちょっと待て」と若干慌てた口調で私を引き留めた。
「行くのは良いとして、流石に暗い中を女子一人で行かせるわけにはいかんでしょ。特に湯野は……っと、丁度良い。おーい、一年!」
丁度部室へ戻ってきたのは、日向翔陽と影山飛雄の凸凹変人コンビと、月島蛍と山口忠の幼馴染みコンビ。バレー部の名物となりつつある、Wコンビの一年生たちだ。
ど突き合う変人コンビと、それを揶揄する幼馴染みコンビ。仲良く(?)部室のドアから顔を覗かせた四人は、澤村の呼び掛けにキョトンと目を丸くさせた。
「今日はもう練習は切り上げて良いから、隣街に湯野と買い出しに行ってきてくれないか?」
「え、今からですか?」
「今日でスポドリが底をついたらしい。頼めるか?」
「はい。良いよね、ツッキー?」
「……まぁ、別に構わないですケド」
「うっす、わかりました」
「えぇぇっ!?」
快諾してくれる幼馴染みコンビと影山。一方で、日向はすっとんきょうな声を上げて影山に噛みついた。
「影山!さっきこのあとの自主練でトス上げてくれるって言ったじゃんか!トスは!?」
「うるせえこのっボケ日向!トスぐらいいつでも良いだろーが!!湯野先輩一人で行かせる気か!?あぁ!?」
「ううう、トス~~っ!」
「あー……、ごめんね日向。別に一人でも大丈夫だから……」
「ダメっす!!」
「うぐっ……」
すかさず影山から厳しい声が飛んできた。
恐る恐る様子を伺うと、必死の形相の影山と目があった。あ、これ完全に『あの事』を引き摺っていらっしゃる……。
「あの、影山?今回は流石に大丈夫だよ?何回か行ったことある場所だし……」
「ダメです。絶対一人では行かないで下さい。外で少し待ってて下さい。頼みますから、本当に」
「は、はい……」
冷や汗ダラダラの青い顔で切実に訴えられ、その勢いに思わず頷く。
月島たちの驚いた視線と、澤村と潔子の生暖かい視線に見送られ、すごすご部室から出た。
先輩形無しも良いところだ。
……いや、自業自得と言われればその通りなんだけど。うぅ……。