第7章 さんかく
何で裏門から帰ろうとしてたのバレてんだ。エスパーか。
ていうか、日高くんもいつの間に私のこと名前呼びになってるし。
それより何より、まず先に考えるべき事を避けていることに気付きつつ、そのまま少しズレたことばかり脳内でツっこむ。
現在逃避?そうだよ。悪いか。
文句あるなら替わってよ!この状況をなんとかしてよ!
誰に言うでもなく勝手に脳内で逆ギレする。
無性に苛々してきた。
何なのコイツらは。
当事者の私を無視して勝手なことばっかり言って。
日高くんはアポなしに突然来ては、私の都合も考えず無理矢理ぐいぐい来るし。
及川は不機嫌全開で初対面の日高くんにいきなり喧嘩売るし、そもそも私には一言も声かけてこないし。
…………ああ、本当に腹が立つ!
「そろそろ、その体勢どうにかしたらどうですか?沙々羅さんに迷惑でしょう」
「沙々羅は嫌なことは嫌ってはっきり言うから、言わないってことは何も問題ないよ。大体、迷惑なのはそっちだろ?ちょっと遊んで貰ったからって何勘違いしてるの?」
「何でアンタ俺が沙々羅さんと遊んだこと知ってるんですか。彼氏面して勘違いしてるのはアンタの方でしょ。ストーカーですか」
「彼氏面じゃなくて、俺は実際沙々羅の彼氏だったの。わざわざ遠い学校からこんな所まできて、ストーカーは君の方でしょ?」
「……は?別れたのに未だに未練がましくまとわりついてるんですか?それこそストーカーじゃないですか。やっぱ、そんな人に沙々羅さんのこと送らせられませんよ。危ないでしょ」
「人畜無害そうな顔して下心ありまくりな奴に送らせる方が危ないだろ」
お互いの言葉に青筋を立てて、半眼で睨む。
譲る気のない平行線上の不毛な言い争い。
埒が明かない。
二人ともそう考えたのか、私を見る。
「沙々羅、俺と帰るでしょ?いつもみたいに。そうだよね?」
「沙々羅さん、俺と帰りましょう。その人危ないです。俺がちゃんと家まで送り届けますから」