第7章 さんかく
「うーん……それはまた複雑な……。一概に誰が悪いとも言えないね。及川は湯野のことを本気で心配してくれたんだろうし。……ただ、敢えて言うならこの前助けてくれた日高くん?彼と二人きりで逢ったのはまずかったんじゃないかなぁ」
「え?だって、私はただお礼をしただけで……」
「お礼するだけならお礼の品を渡すだけでも十分だろう?それが一日遊んでたんだから……そりゃ及川だって不機嫌になるよ。好きな子が他の男とデートしてたんだから」
「…………」
当初はデートという自覚があって、それでも合う約束をしたから、後ろめたさから気まずく目をそらした。
けれど、私はあくまで年下の友人と遊んだだけ。彼と一日過ごしてみて生まれた感情は、友情。
確かに「可愛い」だのなんだの言われて、口説かれたのかとも思ってどぎまぎした時もあった。
が、通りすがりの猫やお店の雑貨を「可愛い可愛い」連呼していた彼を見てそれは間違いであったことをすぐに悟った。
日高くんのノリは割りと女子高生に近いものがある。
お互い恋愛対象ではないと悟ったからこそ、私は日高くんと遊ぶ次の約束をしたのだ。
そう説明すれば、何故か菅原は呆れた表情でため息をついた。
「……湯野ってさぁ。しっかりしてるようで案外甘いって言うか……チョロいよね」
「は……?」
暴言とも思える言葉が菅原の口から出てきたことにぽかんとしていると、「まぁそれは今はどうでも良くて」と軽く流された。
「湯野は及川と仲直りしたいの?」
「そりゃ……出来るものならしたいけど……」
仲直りするにも、何を謝れば良いのかわからない。
痴漢にあったことは不可抗力であるし、まず謝るようなことではない。
日高くんと遊んだことだって、次の約束をしたことだって、私にとっては趣味の合う友人と遊ぶだけ。
「……昔ならまだしも、今は及川にとやかく言われる筋合いは……」
「はい、そこ」
私の言葉を遮って、菅原がビシッと指を突き付けてきた。