第2章 買い出しと再会
「あれ……?」
箱をひっくり返す。
出て来たのは……虚しく部室の床に散らばる細かい塵のみ。
……って、マジか。
「沙々羅?あった?」
呆然とする私の背中からヒョッコリと顔を出したのは、眼鏡の知的美人。
男子バレー部の女神様こと清水潔子。
潔子ってば今日も麗しい……なんて田中や西谷のようなことを考えつつ、空の箱を指す。
「潔子、スポドリがない……」
「え?」
驚いた顔の潔子が私の手元の箱を見て目を丸くし、それから周囲に積まれた段ボールを開けていく。
「本当だ……ないね」
「うわぁぁ、ごめん!てっきりもう一箱はあるとばかり思ってたんだけど……!私のミスだ!」
顔の前でパンっと勢いよく手を合わせる。
時刻は午後五時。休日の部活終わり。
今日の使った分でスポドリ粉末の箱が空になってしまった。明日以降の分を出しておこうと部室に探しにきたことで、今日で使いきってしまったことが発覚した。
この前潔子からスポドリの残量を聞かれていたのに、空箱を中身がある箱と勘違いしていたらしい。
「おーい、湯野居るか……って、どうした?」
「スポドリのストック切らしちゃいました……」
「え、明日の分は?」
「……ない。ので、今から買ってきまーす」
と言っても、今から出掛けたってついた頃には、この辺のスポーツショップはもうシャッターを閉めているだろう。
……畜生、田舎め。
しかしながら、買いに行かないという選択肢はない。部活は明日も朝からあるのだから。
私のミスで明日の選手たちのドリンクがない、なんて事態だけは避けたい。
別に一日くらい、と言われるかもしれないが、誰にどう言われようと、そこは選手のコンディションを整えるマネージャーとしてのプライドだ。
確か一駅先のここよりは少し都会な街に、遅くまでやってるスポーツショップがあったはず。
「別に明日くらい……って、その顔じゃ止めても無駄そうだな」
「よくおわかりで。一駅の先の所に行ってくる。ついでに何か足りないものあったら買ってくるけど。テーピングあったっけ?」
「太めのが少なくなってきてるかも。あとエアーサロンパスもストックが残り少ないかな。一人で大丈夫?私も行った方が……」
「潔子は今日は用事があるんでしょ。大丈夫だって」