第7章 さんかく
……ううん、なんというか。
月島程ではないけれど、影山には並ぶであろう高身長なのに、威圧感はまるでない。
明るい髪の色や、私の対応にわかりやすく一喜一憂する姿といい、それはさながら大型犬……ゴールデンレトリバーのような。
目の前の彼と件の大型犬を重ね合わせて、そのはまり具合に再び吹き出してしまった。
「もー!また笑った!」
「ご、ごめん……っ、馬鹿にしてるわけじゃなくて……ふふっ」
日高くんは、笑い続ける私を憮然とした表情で軽く睨んでいたが、不意に表情を和らげる。
「……湯野さんって、可愛いですね」
「…………は?」
なんの前触れもなく唐突に甘い言葉をかけられて、唖然とした。
「や、何ていうか、もっとクールな感じの人だと思ってました。キリッとした美人なので」
クール。
確かにきつめな顔立ちと、物言いが割りとはっきりしているせいか、そう言われることもある。
けれど、可愛いと言われたのはあまりない経験だった。
「か、可愛いって……」
「結構、感情表現豊かですよね。くるくる表情が変わって、可愛いです。ずっと見てたいくらい」
その言葉がお世辞ではないと気付いたのは、声と同じくらいの甘さを含んだ視線とぶつかったから。
閉口すれば、日高くんは悪戯っぽく笑った。
「はは、かーわい」
「……歳上からかうんじゃないわよ。生意気!」
テーブルの下で脛を軽く蹴れば、大袈裟に痛がる。
助けてもらった時の冷静で丁寧な対応から、もっと紳士な人だと思っていたのに、その正体は悪戯好きのやんちゃ犬。このタラシめ。
「酷い!痛い!」と、きゃんきゃん訴える日高くんを無視してそっぽを向く。
……頬が熱く感じるのは、きっと気のせいだ。