第7章 さんかく
「あのシリーズはなんと言ってもアクションシーンですよね。でも主人公とヒロインの恋愛に模様も良くて」
「そうそう!洋画にしては珍しく引っ張るんですよねー!良い雰囲気になったと思ったら擦れ違って……」
「そうなんですよ!でも最新作では結構進展があって……あ、今度DVD貸しましょうか?」
「え!本当に?良いんですか?」
「はい!是非湯野さんに見てもらいたいです!」
ハンドタオルの購入を済ませて、しばらくぶらぶらしたあとに、休憩がてら立ち寄った喫茶店で向かい合う日高くんと私。
映画の話で盛り上がる私たちは、他のお客さんや店員さんたちの目にも、随分仲良く映っていることだろう。
最初こそ緊張で身構えて固い態度を取っていたが、そんなものは暫く話せばあっさり剥がれ落ちてしまった。
楽しい。彼との会話が物凄く楽しい。
好きな映画もそうだけど、音楽や本、食べ物の好みも似通っていて、不思議と馬が合う。
彼の頭の回転が早く、口が上手いこともあってか、ほぼ初対面同然にも関わらず話は途切れることなく弾むばかり。
始めの内に緊張していたことが嘘みたいだ。
「嬉しいです!最新作見る機会逃しちゃったので、気になってて」
「……ね、湯野さん。その敬語止めません?俺、年下ですし。普通に喋って下さい」
「え、でも……」
「だって湯野さん、歳上なのに俺に敬語ってよそよそしくありません?俺は湯野さんと仲良くしたいのに」
日高くんは拗ねたようにアイスコーヒーを啜る。
その様子に思わず吹き出してしまった。彼にとっては不本意だろうけれど……可愛い。
「あー!何で笑うんですか!?俺は真剣なのに!」
「あはは、ごめんなさい……うん、じゃあ、お言葉甘えて。普通に喋るわ」
「はい!」
タメ口になれば途端に表情を明るくする。