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【HQ!! 】ラブミーギミー

第7章 さんかく




 ある意味新鮮な感覚にほけっとする私の横で、今度は菅原が一歩前に出る。

「あの、友人を助けてくれて、本当にありがとうございました」
「いえ、とんでもないです。……友人、なんですね。付き合っているわけではないんですか?」

 その言葉に私と菅原は顔を見合わせ、お互いに噴き出す。
 彼の質問は、ついさっきまで菅原と電車の中で話していた内容に似ている。

「いやいや、部活仲間ですよ。彼女、マネージャーなんです」
「今日はたまたま出先で会ったので、一緒に帰っていた所で」
「……へぇ……」

 軽く瞠目すると、彼は何か考え込むように沈黙する。

「それよりも、私からもお礼を言わせて下さい。見ず知らずの人間なのに助けて頂いて、本当に……」

 感謝の気持ちに胸を熱くさせ、手に握り締めたハンドタオルの存在を思い出す。

「あ……タオルもありがとうございます。これ、新しい物買って返します」
「え、良いですよそんなの。貰って下さい。もしくはそのまま返して貰っても構わないですし」
「いえ、そういう訳には!さっきのお礼だってしたいので!」

 身を乗り出さんばかりの勢いで言えば、彼は少し驚いたような表情になる。
 再び思案するように顎に手を当てると、やがて小さく頷いた。

「……そこまで熱烈に頼まれたら断る方が失礼ですね。名前、聞いても良いですか?」
「あ……すみません。湯野沙々羅です。烏野高校三年です」
「三年ってことは先輩ですね。俺は日高幹久です。常波高校の二年です」

 二年生。まさか年下だったとは。
 落ち着き払った態度から、てっきり同い年だとばかり。

 菅原が名乗る横で、彼……日高くんを思わず凝視していると、視線に気付いて微笑まれる。
 頬が燃える感覚に俯けば、くすくすと柔らかい笑い声が耳に入る。

「湯野さん、とりあえず連絡先交換しません?お礼してもらうにも、連絡取れないと色々大変ですし」
「は、はい!」

 言われて、慌ててポケットからスマホを取り出す。
 チカチカと通知を報せるランプの点滅に気付いてロックを解除すれば、それは及川からのメッセージだった。

 慌てていた私はその内容も見ずにその通知を消して、連絡先を交換する準備をする。

 その後、菅原に送られて帰宅したあとも、私は及川からのメッセージの存在を思い出すことはなかった。

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