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【HQ!! 】ラブミーギミー

第7章 さんかく




 そもそも、及川とは好き嫌いで別れたわけじゃないのだ。

 性格の相性だって悪くはない。
 別れた間柄だというのに、一緒に居ても気まずい雰囲気になったこともない。

 気を遣わずに自然な自分で居られる。一緒に居て楽しいとも思う。

 ――だけど、それとこれとは話が別。

「……嫌いじゃないけど、また付き合おうとは思わない」

 ……思ってはいけない。
 私には、そう思う資格すらないのだ。

「うーん……それなら、いっそ及川以外の彼氏作ったら?」
「……え?何?」

 思いもよらない提案に思わず聞き返す。

「湯野に彼氏が出来たら、及川も諦めるんじゃない?」
「彼氏……」

 菅原の言うことは一理ある。
 確かに、私に他の彼氏が出来たとなれば、流石の及川も身を引くだろう。

 少なくとも、今まで及川と過ごしていた時間が彼氏へ費やされることで、接触は少なくなる。それに伴って私への気持ちも薄れて行くのでは……。
 ……多分。

 ……いや、宣戦布告されたあの夜の言葉が本当ならば、それでも諦めないような気も……。

「……ううん。そもそも及川に言い寄られたくないって理由で、好きでもない相手と付き合うのもどうなの」
「そりゃ勿論、相手は好きになれそうな人にしてさ」
「それにしたって、そういう付き合い方は相手に失礼じゃない」

 私だったら、嫌だ。
 他の女に言い寄られるのが嫌だから、なんて理由で付き合われるなんて。

 それって、ただ都合の良いように利用されているだけ。

 例え付き合っている過程で好きになってくれたとしても、余計に苦しくなるだけだ。長続きする気もしない。

 そう告げれば、菅原はおかしそうに笑った。

「湯野らしいね。律儀で頑固だ」
「……それ、褒めてるの?貶してるの?」
「褒めてるよ。湯野のそういうとこ俺は良いなって思う。付き合う相手なんて選り取りみどりの及川が、湯野には一途に惚れ込んでるのもわかる気がする」

 真摯に褒められて、嬉しさと照れ臭さで少し頬が熱くなった。

 恥ずかしさに、微笑ましく私を見る菅原から目を反らす。

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