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【HQ!! 】ラブミーギミー

第7章 さんかく




「……菅原」
「ご、ごめんごめん。からかったつもりはないよ。でも、そっかぁ……。湯野って本当に及川と付き合ってるんだなぁってしみじみ思った」
「……昔よ、昔」

 三年半前から、一年と少し。まだ、ただお互いが好きでいられれば、それだけで良かった頃。

 今日訪れたのは、及川と私の定番のデート場所だった。
 
 家がそう遠く離れていない地元ではなく、デート気分をより味わうために、わざわざ現地で待ち合わせをして楽しんでいた。

 私が降りる駅を乗り過ごしたり、逆方向の電車に乗ってしまったこともあって、電話越しに及川を慌てさせたことが懐かしい。

 ……まだ、別れることなんて微塵も想像していなかった、幸せな記憶。

 微かに軋んだ胸の辺りを握りしめ、ため息を吐き出す。
 と、車窓越しにキョトンとした菅原と目が合った。

「え?まだ寄り戻してなかったの?」
「……まだって何。まだって」

 センチメンタルな気持ちも霧散して、じと目で睨めば、菅原は苦笑いで誤魔化した。
 手持ち無沙汰に袋を持ち直している。

「とっくに仲直りしたのかと思ってた。月曜日は絶対迎えに来るし、デートだってしてるし」
「デートじゃない。ご飯奢るっていうから一緒に出掛けて、ついでにお店をぶらついただけ」

 ……そういうのを、デートって言うんじゃ。

 物言いたげな菅原だけではなく、言った私自身もそう思った。しかし、そこは譲れない。

 あれはデートじゃない。断じて。
 及川の言葉に軽く乗せられて、デートしてたなんてそんなの認めない。

 そう告げるために口を開こうとすれば、ガタンと車体が揺れた。おっと。

 喋ることよりバランスを取ることを優先し、袋を持つ手とは逆の手でつり革を握る。

「頑固だね、湯野は。嫌いではないんだろ?及川のこと。何だかんだ一緒にいること多いんだし」
「そりゃ……嫌いじゃ、ない、けど……」

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