第7章 さんかく
※オリキャラいます。また、人によっては不快と感じるような表現が含まれます。ご注意下さい。
タタン、タタンと、一定に刻まれる心地よいリズムは眠気を誘う。
缶コーヒーの広告が貼られた車窓は、客の疎らな車内をうっすら反射させていた。
更にその奥へと目をやれば、瞬きの早さで流れていく景色。
ネオンの光が後引くような都会とは異なり、見えるのは緑が風に吹かれて揺れる田園風景や、細々とした店や住宅の建ち並ぶ市街地。
その長閑な風景も相俟って、思わず欠伸を一つ。
「随分大きい欠伸だね。夜更かしでもした?」
車窓に映った菅原は、柔らかい笑みをたたえている。
……見られた。少し恥ずかしい。
「ううん。けど、電車に乗ってると眠くならない?」
「あー、確かに。振動とか音とかが人間にとって心地良いから、って聞いたことある」
他愛もない話題が途切れると、菅原はぽつりと呟く。
「……それにしても、驚いたな」
「何が?」
首を傾げて見せれば、菅原は手に持ったスポーツショップの袋を軽く持ち上げた。
「ここに案内して貰ったとき。駅の近くを一人で歩いてたから、もしかして迷ったのかと思って声かけたのに」
「あぁ……」
不本意ながら……大変に不本意ながら、方向音痴とのレッテルを周囲から貼られている私。
同様の認識をしている菅原からしたら、地元から少し離れた駅の付近を一人歩く私を見て、もしや盛大に迷っているのではと、大変肝を冷やしたのだとか。
しかし実際は、あの付近は私がよく知る土地である。
品揃えが豊富と評判のスポーツショップを目当てにした菅原を、逆に案内して買い物に付き合ったくらいだ。
「あの辺は、前からよく遊びに来てたの」
「へえ、及川と?」
「そうそう……って」
……何で菅原が知ってるの!?
ほぼ反射的に顔を上げれば、笑いを堪えた表情の菅原。
遅れて鎌をかけられたことに気付き、唇を引き結ぶ。