第6章 月曜日
「え……及川くんってそういうタイプ……?」
「幾らルックス良くてもそれは……」
「ねぇ、もう行こう……」
「あぁ、ショック……まさかあんな人だったなんて……」
「良い男なんて他にもごまんと居るって。例えば、ほら、サッカー部のさ……」
冷ややかに及川を一瞥したあと、女子たちはあからさまにしらけた様子で、ぞろぞろ帰っていく。
青い顔をぶんぶんと左右へ振って、「ご、誤解だから……!」と私に向かって弱々しい声で訴える及川の言い訳がましさと言ったら。
「なーにが誤解ですって!?元部活仲間だかなんだか知らないけど、別れた途端にさらに鞍替えしたくせに!」
「いや、鞍替えも何も俺は元々沙々羅ちゃん一途で……」
「言い訳無用!幾らイケメンだろうと、私の友達を泣かせるような真似するなら、容赦しないんだから!!」
私を背に庇いながら、及川を睨みつける麻子。
ついさっきまで、及川にアピールしていたとは、とても思えない。
私より背の低い麻子の背中を見ながら、態度の変化の理由に今更ながら気付く。
「……もしかしなくても、麻子って及川が好きで邪魔しようとしたわけじゃないの……?」
「え?当り前じゃん」
「だって、さっき……」
「違う違う!!確かに意図的にさらを悪く言ってる風にしたけど、そういう意味じゃないから。
『えー、私だったらそんなことしないのになー(もっと容赦なくやるけど)』
『優しいんだね(さらが)。私だったら絶対愛想つかしてるけど(及川くんに)。普通、優しくしてくれる相手にそんなこと(つけ込もうと)するなんて、神経疑うよ』
……的な?」
「でも、何で急にそんな……。麻子、及川のこと騒いでたし。待たせてる相手のこと有り得ないって……」
月曜日まではミーハー全開で及川を褒め称え、及川が迎えに来る相手が私と知らず貶していた麻子は、少し前の自分の言動を思い出したのかぎこちなく目をさ迷わせる。
「そ、そりゃあ、確かにイケメンだし?最初は狙ってたけど……どうもさらと関係あるっぽいから調べてみたら、女関係だとろくな噂を聞かないし。だから、籠絡してさらと別れさせた後にこっぴどく振ってやろうと……」
「麻子……」