第6章 月曜日
「いい加減に……」
「いい加減にするのはアンタの方でしょっ!!」
苛立った様子の及川もお構いなしに、麻子は無理矢理私と及川の手を引き剥がし、私たちの間に割って入る。
――私を背に庇い、及川と対峙するようにして。
…………え?
目を丸くする私と周囲の女子。
その中心で、麻子が及川を睨み付ける。
「さいっってい!!弱ってるさらにつけ込んでそのままお持ち帰りとかアンタには良心ってものがないの!?」
「え……?麻子?」
悲しい気持ちも涙も引っ込んで、半場呆然と名前を呼ぶ。
麻子は振り返り、真面目な顔で私の肩を掴んだ。
「さらは騙されてるんだよ!」
「……は?」
「こんな軟派で浮気性な人、さらには相応しくない!どうせ飽きたらその内ポイされるんだから!ちゃんと考え直して!」
なんのこっちゃと、首を捻る私に麻子は何処までも真剣であった。
一方、先程までピリピリした空気を纏っていた及川は、すっかり毒気の抜けた表情で目を瞬かせる。
「う、浮気しょ……ポイ……?えーと……、俺は結構一途なつもりなんだけど……?」
「へえ、この前まで女子校のミスと付き合ってたのに?」
「へっ!!?」
「……女子校の?……ミス?」
思わぬ言葉にそのまま反復すれば、及川は大袈裟に肩を跳ねさせていた。
「ちょっ、何でそれを……!?いや、その……違うから!沙々羅ちゃんと再会する前だったし、もうちゃんと別れたから!」
麻子に女性遍歴を暴露され、及川はチラチラと私の様子をうかがう。
……へぇ、女子校のミスと。へぇ……。
「その前だって、青城の一年生とか、大学生とか、短いスパンで彼女取っ替えひっかえしてるらしいけど?何だっけ?一途?」
「いや、だから、それは……!」
青白くなっていく及川の顔色。
それに倣うように、周囲の女子たちの及川を見る目までもが、急激に温度を下げていく。
青城へ進学した友達から聞いて、及川の彼女は結構把握してたつもりだけど、ミスは知らなかったわぁ……。
どうも思っていた以上に派手にやっていたらしい。