第6章 月曜日
あの手この手で及川とお近づきになろうとする彼女たちに対し、及川は笑顔で上手くかわしている。
ほぼ同時にかしましく口を開く女子の言葉は、私には聞き取れないのに。聖徳太子か、アイツは。
物陰からこっそりその様子を眺め、そして手元のスマフォに視線を落とす。
私の既読も付かない内に及川が一方的に行ったことではあるが、私が行かなければ及川はきっといつまででも待っている。
文句を言うついでに及川の指定した裏門まで来たのは良いものの、この有り様だ。
慌てて近くの倉庫裏に隠れ、その直後に送られたきた冒頭の通知。
……おい、私にどうしろと。
というか、月曜日の言葉はどうした。
確かバレないように上手くやるとか何とか言ってなかったか、及川のやつ。
何が『信じて』だ。『嫌な思いなんてさせない』って、してるわ。現在進行形で。
少しだけ。本当にほんのちょっとだけなんだけど、うっかり……ときめいてしまった私が馬鹿みたいだ。私のときめき返せ。
沸々と湧き上がる怒りに身体を震わせていると、手の中のスマフォが震えた。
まさか、私の怒気に恐れを為した……わけがない。新たにメッセージを受けた合図だ。
『今日はいつもに増して勢いが凄い((((;゜Д゜)))』
『沙々羅が来るまで粘る気満々のみたい……(-_-;)』
「えっ……!」
思わず顔を上げて及川の方を見る。
相変わらず愛想よく女子生徒の相手をする及川。
しかし、よく見ると右手は後ろに回されている。
後ろ手にスマフォを操作して、私にメッセージを送ってきているらしかった。
文字だけならともかく、顔文字まで……。しかも誤字がない。何だこのとてつもなく無駄なスキル。
『自分でどうにかしろ』
素っ気なく返事をすると、間もなくついた既読とともに増えたメッセージ。
『自力でどうにかしたいのは山々なんだけど……』
『沙々羅ちゃんのお友達っぽい子が勘づいてる(;・∀・)』
『他の子はともかく、その子がどう頑張っても退きそうにない・゜゜(ノД`)』
友達……って。
及川を包囲する女子たちの背中。その中に、見慣れたものがあることに気付く。
あ、麻子ーー!?