第6章 月曜日
「私だってバレたらどうすんの!?烏野でも北一同様に女子を敵に回すのは絶対嫌!」
「うーん、まぁ、その時はその時ってことで。俺と沙々羅は付き合ってるから応援してねって言えば……って、うそうそ、冗談だからその拳を収めようか」
「ていうか、及川がうちに来なければ良いだけの話じゃない!」
「それは無理」
きっぱりと及川が言い切る。
それがあまりにも今までの適当な声音と異なり真剣だったから、言葉に詰まる。
「毎日だって逢いたいのに、一週間に一回で我慢してるんだよ?俺、沙々羅に逢えなくなったら……寂しくて、死んじゃうかも」
……脅しか。
幾らなんでも死ぬだなんて。
冗談にしても質が悪い。……冗談、だよね?
「まぁ、沙々羅だってバレないように上手くやるから安心してよ。今までもどうにかしてきたし。……大丈夫。沙々羅に嫌な思いなんてさせない。お願い信じて、俺のこと」
真剣な囁きに、続く言葉が出てこない。
及川のそれはお願いと下手に出ているように見せかけて、命令に等しい。
いっそ傲慢とも言えるほどの自信ゆえだ。
私が絶対に嫌だと言えないと、確信している。
……あぁ、腹が立つ。
でも、その通り。私は及川の命令に抵抗できない。
それは、間違いなく未だに胸の中で燻っているもののせい。
本当に、厄介だ。
胸を辺りの服を右手を握りしめ、目を伏せる。
「……ところで、沙々羅ちゃん。一つお願いがあるのですが」
「……何」
「写真撮って良いですか」
「………………は?」
……何だって?
聞き間違えかと、がばっと顔を上げる。
そこには、スマフォ片手にぷるぷると身体を震わせ、緩む口元を片手で押さえる及川の姿。
「上目遣いヤバイ。超可愛い。待ち受けにしたい」
「………………」
その数秒後、及川の悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。