第5章 攻防戦
「え、今のどこに笑う要素あった?」
「ううん。沙々羅可愛いなって」
「な、何唐突に?褒めたって何も出ないよ?」
挙動不審な私を見て、潔子はますます楽しそうに笑う。
なんだろう、いたたまれない……。
微笑ましそうな視線が居心地悪くて、もぞもぞと落ち着きない私に、澤村が「湯野」と改まって声をかけてきた。
「事情はわかった。個人の恋愛に口を出すつもりはない。けど、公私混同は避けてくれ。うちのサインとか、バレーに関しての情報漏らすのはなしな。……ま、湯野も及川もそんなことしないだろうけど、一応な」
主将の顔で厳格に告げる澤村……って、ちょっと待て。
「大王様かぁ……。やっぱり湯野先輩迎えにうちに来たりすんのかな。なんか変な感じがする」
「コートの中じゃ強敵ってことは変わりねーだろ。IH予選でも気ぃ抜くんじゃねーぞ」
「あったり前だろ!!」
と、何やら熱くなってる日向と影山。
青春は大いに結構なことだけれど、それ以上に物凄く聞き捨てならないことを聞いた気がする。
「ねえ、日向、影山。それ絶対勘違い……」
「打倒青城ぉぉぉ!!ぜってーぶっ倒す!!主にあの優男を!!」
「おうよ!!及川っつーのはよく知らねーけど、沙々羅さんに手ぇ出した仇ぃぃい!!」
変人コンビを問いただす言葉は、田中と西谷の叫びに掻き消される。
こちらも別の意味で熱くなっているようで、血涙流さんばかりの勢いだった。
……いや、だからそれ絶対誤解して……、
「沙々羅、困ったことがあれば何でも相談してね。恋愛ってあんまり得意じゃないから、大して力になれないかもだけど」
そして、潔子からのだめ押しの一言。
……あーもー、だから!!!
「違うってば!!確かに及川に告られはしたけど――きっぱりお断りしました!!」