第5章 攻防戦
ショックを受ける東峰を、縁下力が「まぁまぁ」と宥める。
「でも、まさか湯野先輩があの青城の主将と付き合ってたなんて……」
「正直趣味悪いよな……。あんな性格ねじまがってそうな男とか」
「顔か。やっぱ顔なのか……」
「そこ!!聞こえてるわよ!!」
縁下と同じく二年の成田一仁、木下久志がこそこそと貶すので、ビシッと指差して牽制しておく。
因みに他の二年、西谷と田中龍之介は悟りを開いている。
私が及川と付き合っていたという事実が余程ショックだったらしい。
「……これで満足ですか、潔子さんや」
びっくりするほどの強引さで、私から情報を引き出した張本人、潔子は随分と楽しそうだ。
普段の慎ましさ何処行ったと問い詰めたい。
「あの人、案外一途なんだね。青葉城西に練習試合に行ったときに声かけられたから、てっきり軽い人かと思ってた」
「……一途っていうか、粘着質なだけでしょ。あと物凄く軽いから」
潔子に声かけたとか及川ぜってーシメる、と頭の中で指をバキバキ鳴らしていると、潔子がくすくす笑う。
その様子を見て部員たちがざわついた。
男子にとっては潔子の笑顔ってレアなんだっけ。女子同士だとちょくちょく笑うんだけどね。
因みに潔子信者の西谷と田中は悟りを開いているせいか気付いていない。
……なんというか、色々と残念な二人だ。