第5章 攻防戦
「……えー、つまり及川は湯野の元カレで」
「一方的に振ったもんだから、及川の方は未だに湯野に未練があって」
「追いかけられて、もう一回告られた……ってことかな?」
「…………ハイ」
澤村、菅原、東峰の三年生の見事な連携プレーによる入念な確認。
ふふふ……、流石三年生。息ピッタリだわー。とかなんとか考えつつ、ゴリゴリと精神力を削られていた。
部活仲間に自分の恋愛事情を「マジかよ……」と言わんばかりの表情で確認されるって、コレ何て羞恥プレイ。
潔子の誘導尋問に、及川との関係を含めた昨日の出来事を洗いざらい吐かされた所だった。
事実が明らかになるに連れて、驚きから羞恥、そして生温いものに変化した部員からの視線に、私はもはや憤死寸前。
穴があったら入りたいという諺を身をもって経験していた。出来ればご遠慮したかった。こんな経験。
おまけに、影山からいらん茶々が入るせいで余計なことまで暴露する羽目になったことが羞恥に拍車をかける。
本人には一切の悪気がない辺りが腹立たしい。
影山め……方向音痴に続いて、恋愛事情までバラしやがって……!!
絶対許すまじ、と影山の方へ顔を向けると、驚愕の表情を作る影山がいた。
「湯野先輩って及川さんと付き合ってたんですか!!?」
「…………」
……寧ろあれだけ赤裸々に暴露しておいて、知らなかったことの方がよっぽど驚きだわ。
あまりのアホらしさに怒る気力も無くして脱力する。
「あぁ……だから大会の日って必ず俺の近くに居るんだ。その青城の主将と顔合わせたくなかったから、盾代わりに。道理でね……ははは……」
「盾……」と自分で言って、自分で落ち込む東峰旭。
相変わらず、見た目に反して気の小さいこと。
「……まぁ、否定はしないけど」
「しないの!?」