第5章 攻防戦
「湯野先輩だぁぁ!!!」
体育館に入るなり、日向が絶叫した。
その叫びを聞いて何事かと振り返る部員たち。
日向の視線の先に私を見付けるなり、一年生たちが総じて顔色を変えた。
「先輩、大丈夫でしたか!?」
影山を筆頭にバタバタと鬼気迫る表情で向かってくるガタイの良い男子高校生(日向は除く)四人。
「え……え?何が?」
中々に迫力のあるそれに、若干引き気味に首を傾げた。
珍しく、山口が焦れたように言う。
「昨日ですよ!買い出しの時!」
「追いかけられてましたよね。青城の主将サンに」
「あぁ……」
月島に指摘されて、漸くあの場に一年生たちがいたことを思い出す。
「ごめんね、突然何も言わずに行っちゃって。あのあと大丈夫だった?」
「それはこっちの台詞です!先輩こそ大丈夫だったんですか!?及川さんに追いかけられてたじゃないですか!!」
「俺たちも追いかけようとしたんですけど、青城のエースの人に『大丈夫だから放っておけ』って言われて……」
おどおどする日向を押し退けた影山が「何もされませんでしたか!?」……って、どんだけ後輩に信用されてないの、及川。
影山の勢いに押されて後ずさっていると、助け船が入った。
「ほら、影山落ち着けって。湯野が困ってるよ」
「……すんません」
副主将の菅原孝支にたしなめられて、影山がしゅんと落ち込む。
「気にしないで。私のこと心配してくれたんでしょ。ありがとう」
「……うっす」
「沙々羅さん、昨日何かあったんですか?」
事情を飲み込めない二、三年を代表して、西谷夕が私と一年生たちを交互に見ながら疑問を口にした。
「買い出しの帰り道に青城と逢ったの。……及川とか岩泉とか」
「そっか、湯野って影山と同じ中学校出身だから、青城には知り合いが多いんだっけ」
「でも、さっき影山が及川に追いかけられたとか言ってなかったか?」
……うん、普通そこが気になりますよね。デスヨネー。