第4章 帰り道
堪えきれないとばかりに及川が盛大に吹き出した瞬間、私の羞恥メーターが振り切れた。
「笑うな!!アホ!!ボケ!!及川のばかあぁぁ!!」
行き場のない怒りの捌け口として、目の前で爆笑する及川の胸を殴りまくる。
しかし、笑い悶える及川の様子を見るに、大したダメージではなさそうだ。寧ろ嬉しそうに拳を受け止めている。
くっそ、影山と言い及川と言い、この北一セッターども……!!
「いたっ、いたい。ご、ごめんごめん。馬鹿にしてるわけじゃなくて……ぶくく」
「笑いながら言われても説得力皆無だわ!!」
「ち、違う違う。そうじゃなくて……あれ、沙々羅ちゃんどこ行くの?」
「帰る!!」
「……へえー、帰るの?何処に?」
「うるさい!家に決まってんでしょ!!着いてくんな!!」
「そっかー。でもそっちに歩いて行っても家には帰れないと思うんだけどなー。……駅、こっちだから」
進行方向とは異なる方向を指差す、及川の言葉にぴたりと足を止める。
全身を恥辱に震わせる私の肩を、及川はそれはそれは優しく叩く。
「沙々羅ちゃん。及川さんと一緒に帰ろうか」
「…………」
ギッと視線で射殺さんばかりの勢いで及川を睨む。
しかし、当の及川は涼しい顔だ。
私がその誘いを断れないことを確信している底意地悪い笑み。
ムカつく……!!
素直に頷いてやるのも癪だ。とりあえず、返事の代わりに膝裏に蹴りをくれてやった。