第4章 帰り道
「待って!!沙々羅ストップ!!」
「断る!!誰が待つか!!」
「ちょっとだけ話させて!!お願い!!」
「私はアンタに話すことは何もない!!」
「俺にはあるの!!」
夕暮れの街を怒鳴り合って爆走する高校生の男女。
通行人にとっては実にシュールかつ迷惑に映っただろう鬼ごっこは、早々に片が付いた。
それもそのはず、片や体力落ち気味の既に走り疲れた女子高校生。片や現役の強豪運動部の男子高校生。
端から勝敗は決していたも同然だった。
「……っ捕まえた!!」
人気のない路地へ曲がったところで、右腕を掴まれる。
振りほどこうとしても、右腕を掴む力は存外強くて離れない。
「放して!」
「ごめん、沙々羅。でも俺、どうしても話がしたい」
「うるさい!大体何でアンタが此処に居るのよ!!」
「何でってそりゃ……」
「アンタの高校も家も真逆の癖に!!」
「……。えっと、此処、青城のすぐ近くだよ?」
「何でよりによって今日……って、え?」
…………は?だって、青城って烏野の最寄り駅から、こっちとは逆方向の駅じゃ……え?
「うん、だからね。此処、俺の学校のすぐ近く。いつも使ってる通学路」
…………。
……つまり、あれか。
あれだけ必死に及川を避けておいて、青城の場所を勘違いして、及川との遭遇率が高い場所に私自身がのこのこやってきたってこと……?
「ねぇ、沙々羅ちゃん?も、もしかしてさ、青城の場所、勘違い、してた……とか?」
「…………」
「………………ぶふぉっ」
「……うがあああああ!!!」