第4章 帰り道
及川徹。
岩泉と同じく、私の中学時代の同級生でバレー部の仲間。
ただ、一つ岩泉とは違う関係を挙げるとすれば、
――及川は、私の『元』彼氏だ。
顔よし、頭よし、運動よし。
言動はチャラいものの愛想の良いハイスペック男を、女子が放っておくはずがない。
中学時代から及川は学校中の女子から王子様扱いされ、非常にモテた。
本人も女好きであり、女子から寄せられる好意を邪険にするはずなく、気紛れに彼女を作りつつリアルハーレムを形成。その人気ぶりは留まることを知らず、他校にもファンが存在するという有り様。
全世界のモテない男に歯軋りされるような究極のリア充野郎であった。
中学二年の夏休み終了時に北一へ転校してきた私は、そんな及川に当初はドン引きしていたのだけれど。
その数ヵ月後には及川と付き合うことになっていたのだから、人生何が起こるかわからない。
ともあれ、私は及川と付き合っていた。
周りから「ホントに付き合ってるの……?」と疑われるくらい、私は及川に辛辣だったし、及川も女子への対応を変えなかったけれど。
早々別れるだろうという周囲の予想を裏切り、私と及川の交際期間は一年以上に及んだ。
別れた時だって私が一方的に別れを告げただけで、及川には猛反発を食らった。
そんな及川から逃げまくり、そのまま卒業。別々の高校に進学したことで、うやむやのうちに私たちの関係は途絶えた。
及川がどこの誰と付き合ってるなんて噂はよく聞くし、一方的に別れを告げた私のことなんてもう気にもかけていないだろう。
それでも、そんな別れ方をした罪悪感から、例え一瞬でも及川とは顔を合わせたくなかった。