• テキストサイズ

【HQ!! 】ラブミーギミー

第2章 買い出しと再会




 目の前で驚きを顕にしているのは、中学時代バレー部で同級生でもあった岩泉一だった。
 確か今は青城に進学して、バレー部の県内四強チームの中でレギュラーメンバーとして活躍していたはず。
 中学時代の級友とのまさかの再会に半場呆然としていると、バタバタと慌ただしく駆け寄ってくる足音。

「湯野先輩大丈夫ですか……って」
「あー!!青城のエースの人!!」

 騒がしい日向の声に顔を上げた岩泉は、一年生たちの顔と私の顔を見比べて、更に驚愕の表情を浮かべた。

「お前ら、烏野の……!?」
「えーと……私の後輩たち、です」
「後輩ってお前、烏野だったのか!?しかもバレー部!?」
「…………はい」
「いや、でも、この二年間試合会場でも見かけなかったし、この前の練習試合だって……」

 後ろめたさに肩を竦めて視線をさ迷わせる。
 それだけで、察しの良い岩泉はわかってしまったらしい。

「……アイツか」
「……うん。私が烏野居ること、アイツには言わないで欲しい」
「別に構わねーけどよ。お前はそれで……」

「おーい、岩ちゃーん。何してんのー?早く行こうよ」

 複雑な表情で何事か言いかけた岩泉の言葉は、後ろから響いた声に掻き消される。

 その声に、私は一瞬呼吸すら忘れて固まった。

 な、ななな何で…………!!?

「……わりぃな。前言撤回」

 「言うまでもなくバレたわ」と、冷静に呟く岩泉。それは私にとって死刑宣告にも等しい。

 ギギギと、油切れのブリキの如きぎこちなさでゆっくり振り返る。

「……あれ、女の子?何々、知り合い?もー!岩ちゃんったら隅に置けな……い……」

 岩泉と同じ青城の白ジャージに、無造作を装ってセットした栗色の髪。
 夕焼け色に染まった女受けの良い端整な顔が、ぽかんと無防備な表情を晒す。

「……沙々羅?」

 薄い唇が私の名前を刻むとほぼ同時に、私は弾かれたようにその場から駆け出した。


/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp