第2章 買い出しと再会
目の前で驚きを顕にしているのは、中学時代バレー部で同級生でもあった岩泉一だった。
確か今は青城に進学して、バレー部の県内四強チームの中でレギュラーメンバーとして活躍していたはず。
中学時代の級友とのまさかの再会に半場呆然としていると、バタバタと慌ただしく駆け寄ってくる足音。
「湯野先輩大丈夫ですか……って」
「あー!!青城のエースの人!!」
騒がしい日向の声に顔を上げた岩泉は、一年生たちの顔と私の顔を見比べて、更に驚愕の表情を浮かべた。
「お前ら、烏野の……!?」
「えーと……私の後輩たち、です」
「後輩ってお前、烏野だったのか!?しかもバレー部!?」
「…………はい」
「いや、でも、この二年間試合会場でも見かけなかったし、この前の練習試合だって……」
後ろめたさに肩を竦めて視線をさ迷わせる。
それだけで、察しの良い岩泉はわかってしまったらしい。
「……アイツか」
「……うん。私が烏野居ること、アイツには言わないで欲しい」
「別に構わねーけどよ。お前はそれで……」
「おーい、岩ちゃーん。何してんのー?早く行こうよ」
複雑な表情で何事か言いかけた岩泉の言葉は、後ろから響いた声に掻き消される。
その声に、私は一瞬呼吸すら忘れて固まった。
な、ななな何で…………!!?
「……わりぃな。前言撤回」
「言うまでもなくバレたわ」と、冷静に呟く岩泉。それは私にとって死刑宣告にも等しい。
ギギギと、油切れのブリキの如きぎこちなさでゆっくり振り返る。
「……あれ、女の子?何々、知り合い?もー!岩ちゃんったら隅に置けな……い……」
岩泉と同じ青城の白ジャージに、無造作を装ってセットした栗色の髪。
夕焼け色に染まった女受けの良い端整な顔が、ぽかんと無防備な表情を晒す。
「……沙々羅?」
薄い唇が私の名前を刻むとほぼ同時に、私は弾かれたようにその場から駆け出した。