第1章 狢
「一番じゃなくても私は満足。だってあやめは貴方の一番にはならないもの。貴方が彼女と両想いにならないなら、どうだって良い。」
「だったら、この状況はなんなんだよ。わざわざ厭み聞かせる為に俺を連れて来たのか?」
「ふふ、ハズレ。言ったでしょう、これは逆恨みだって。ねえ、私を抱いて。抱き締めて。そうすれば、あやめに愛される事を許してあげる。」
「ハッ。随分と支離滅裂な事を言いやがるじゃねーか。アイツが俺に惚れてるから、俺がお前を抱く? そんで抱けば、アイツに惚れられてる事を許してやる? 偉そうなこと言ってっけど、そんな事してアイツに嫌われんのが目に見えてんだろうが。」
もはや女の思考は理解不能だった。あやめに惚れており、あやめが惚れている銀時を逆恨みするまでは分かる。しかし、銀時の命ならまだしも、体を欲しがる理由は皆無の筈だ。もう頭がぶっ飛んでるとしか言いようがない。
「あやめが私を一生怨んでも構わない。いつか貴方があやめを抱いても、間接的に私はあやめと一つになれる。そう思うだけで嬉しいの。」
「……汚ねえ妄想する女だな。俺ァ、アイツを抱く事なんざ一生ねーよ。」
「知ってる。」
気色が悪い。とどのつまり、銀時の体は彼女があやめと繋がる道具でしかないのだ。しかも実際に銀時があやめを抱く抱かないに関わらず、これは中学生男子が好きな女子生徒のリコーダーを舐めるのと同じ要領で、間接的な繋がりを楽しんでいるだけ。かなりシモに下がった強引なやり方なのが更に胸くそ悪い。