• テキストサイズ

狢(銀魂:銀時夢)

第1章 狢


「てっ、んめぇ。何しやがったっ!」

 強がった言い方ではあったが、声量は小さく弱々しいものである。威勢のある態度で問い質そうとするも、それを許さない体に銀時は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「大丈夫よ、ただの睡眠薬。」

「……酒飲んでる時に睡眠薬とか殺す気かよ。誰だ、てめぇは。」

「始末屋なっちゃん、とでも名乗っておこうかしら。あ、なっちゃんは名無しのなっちゃんね。貴方に名前は知られたくないもの。薬の事は心配しないで。お酒の席で忍が使う安全な睡眠薬だから。ほら、情報を毟り取るのに肝心のターゲットを殺したら元も子もないでしょう? ちなみに意識が戻った後も、体はしばらく自由に動かせないから。」

 笑みを浮かべた名無しの女は陽気な返事をする。

 始末屋と言う単語で、銀時は大いに嫌な予感を感じた。何故ならば、始末屋と言って思い出すのは年がら年中銀時をストーキングするド近眼なメス豚くノ一だからだ。しかも意図的に「さっちゃん」を彷彿とさせようとしているのか、女も「なっちゃん」と名乗っている。……名無しが由来なのだから名乗るとは言えないかもしれないが。少なからず、厄介な状態で厄介な人物と対峙しているという事だけははっきりと認識できた。

 ぶっちゃけ今いる場所はラブホの一室だ。部屋のデザインもそういう雰囲気を作る為に考えられたものなのは明らかなのだから。作りも素材も高級感が漂っているので、恐らく上等な所なのだろう。安いイメクラから一転して豪華なラブホへ。自らここへ辿り着いたのならばドヤ顔で女を相手にしていただろうが、今回は攫われたも同然であり、まずこんなに高い場所へ来る金もない。果たして何の目的でこの女は銀時をこんな所へ連れて来たのだろうか。

「この状況を説明しやがれコノヤロー。」

 相手はしたくないが身動きが取れない以上、銀時はただ答えを求める事しかなかった。

「うーん。逆恨み、かしら。」
/ 10ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp