【家庭教ヒットマンりボーン】だって、かっこいいもん。
第1章 無頓着な姉
欠伸をころしながら、黒板に書かれた白い活字を、ノートに走り書きをする。
あー、ダメだ。
先生の言ってる事が呪文にしか聞こえない…ぜんっぜん分かんない
自慢じゃないが、私は頭が悪い。自慢じゃないが。
ツナほど、ではないけどね。
意識がうつらうつらと、途切れそうになった頃悪魔のような言葉が聞こえた。
「よーしじゃあこの問題は、すでに意識を手放しそうな沢田で」
「「あははっ」」
「…げっ」
ご指名入りました。わー、私人気者ー。
ちらりと黒板へ視線を送る。
…わっかんね。
「えーと、じゃ8」
適当な数字を言うと、先生の表情が固まった。
お、これ来たかも。
「なんで当たるんだ…」
「おーっさすが沢田っ」
「すげーっ」
あはは、と笑いが溢れる。
おー、当たったあたった。我ながらすごいと思う。
これがテストの解答だったらいのになぁ。
他人事のように思いながら席に着いた。
教室の窓際、一番後ろの席。私の特等席。
その窓からは、我が弟が保体してる様子も見えるし、あの爽やか青年もいつもの笑顔で走り回っている様子も見える。
教室内では、だれが寝てるか分かるし案外飽きない席に満足。
頬杖をつきながら、シャーペンをくるくる回す。
こんな日々が、私は大好きだ。
――
「ね、知ってる?」
「んー、知らない」
「いや、聞いてないでしょ」
お母さん自慢のお弁当を箸でつつきながら、受け答えをする。
やっぱり、お母さんの料理はウマイ。
「転校生、来たんだって」
「へー」
「あんたの弟のクラスらしいよ」
「ほぉー」
「それに、イケメンっ!」
「ふーん……イダダダっ」
鼻を摘ままれ、左右に揺らされた。メチャクチャ痛い。
なにすんのっ。そう反抗するつもりだったが、友達Aちゃんに青筋が見えたので口を閉じた。
「転校生って、珍しくないじゃんかぁー…」
せめてもの反抗で、言ったが小声で囁き口調になってしまった。チキンとか聞こえないから。
「イタリアに留学してたらしいの、すんごっく気になんないっ!?」
「んー、まぁ外国から、ねぇ」
イタリアと聞いて、あまりいいイメージが浮かばない。
あの人を、思い出す。
優しい笑顔で、頭を撫でてくれた、あの人を。
「…なによ、似合わない」