第4章 あったかさ半分こ*澤村【☆】
10月某日。
「だ…大地」
「名無し?どうした?」
部活を終え 2人で帰ろうと部室から出た直後
私は固まった。
「さ……寒すぎる…」
黒いタイツを履いていても この季節では微々たるものだった
「女子は大変だよな…下にジャージ履くのも禁止だもんな」
「まぁ履いて良くてもスカートの下にジャージ履くとかっこ悪いから誰も履かないけどね…」
乙女のお洒落とは常に我慢が付き物だよ とつ付け足す。
「ははっ 名無しは制服がお洒落だと思ってるのか?」
「え…思ってないよ?ただ他の高校より烏野は制服可愛いってだけで…」
西谷君はそれだけで烏野を選んだくらいだからね と笑いながら話す
「よし じゃあ今日は俺が寒い中でもタイツだけで頑張ってる名無しの為にミルクティーおごってやる!!」
その爽やかな笑顔を私に向ける
「本当!!?ありがとう大地…!!!」
ぴょんぴょん跳ねながら喜ぶ名無しは本当に可愛らしくて思わず抱き締めそうになる。
「ほら」
私に手を差し出す
「うん!!」
私はその手を握り歩き出す
しばらくすると大地は ちょっと待っててな
と 自販機へ走りミルクティーを持って帰ってきた
「ほら」
と私の手にミルクティーを置いてくれた
「わーい!!ありがとう大地!!」
一口…二口…とミルクティーを飲んでいく
「あったかーい!!」
にこにこしている名無しから ふわり と甘い匂いが漂う。
「……」
俺は ひょい と名無しからミルクティーを取り 飲んだ
「大地…?」
彼女は若干驚きを含んだ表情を浮かべた
「俺も名無しと同じミルクティーの匂い」
それから と私の手を握り唇にキスをした。
「同じくらい暖かいな」
「……う…うん…」
名無しは恥ずかしいのか俯いた
(同じくらい暖かいとか同じ匂いとか…いきなり言うなんて…ずるい…)
「ほら名無し帰るぞ」
手を繋ぎ直してまた歩き出す。
(ほら もう寒くない。)
End,