【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第7章 6Fr!『それぞれのObsession!』
「……夏兄っ」
言葉と共にすっと伸びてきた手が遙の頭をポンポンと撫でる。
遙は一緒にいられる嬉しさと高まる夏樹への想いにより、思わず緩んだ口許を手で隠しながら俯いていた。
「___なぁ、ちょっとだけ海寄って帰らねぇ?」
唐突とも言える夏樹の提案に一瞬動きを止める真琴達。
キッ、と静かに音を立て止まった車。
「………海?もう暗いけど……」
陽は沈み、夜の帳が下りてきている空には、すでに幾つもの星が瞬いている。
海沿いの道に停められた車の運転席から降りると夏樹は弾けるような笑顔を未だ車内に残っていた真琴たちへと向けた。
「いいんだよ。俺が海を感じたいだけだからさ。………付き合ってくれるか?」
「もっちろん♪ね?ハルちゃんもいいでしょ?」
「あぁ……構わない。」
渚達の返事に嬉しそうに微笑むと両腕を空へと伸ばし夏樹は体を伸ばした。
肺一杯に潮風が充満するのを感じ、久々の競泳で昂った心が落ち着きを取り戻していく。
夕闇の中、大好きな海を見つめる夏樹の姿はとても綺麗で、遙たちは目をそらすことも出来ずにただ静かに見つめていた。
そんな中、沈黙を破ったのは渚で___
「なっちゃんっ!なっちゃんっ大好きっ♡……さっきまでハルちゃんばっかりズルかったから、もう僕なっちゃんから離れない~!」
夏樹の背中にぐりぐりと自分の頭をすり付けながらぎゅうと抱きつく渚。そんな渚の姿を愛しそうに見つめながら夏樹はその柔らかな髪をくしゃくしゃと撫でる。
「………おい。渚、やりすぎだ。」
「そっそうだよー渚くんっ!夏樹さんの独り占めはいーけーまーせーん!!」
「渚くんっ!こんな野外でそのような行為は目に余りますよ!」
次々とかかる渚に向ける抗議の言葉は当の渚には届かないようで、だってぇ、と言いつつも抱きついた腕が緩む気配は感じられない。
「……可愛いなぁ。お前ら。………こっちおいでよ、遙たちも。」
そんな皆のやりとりを楽しげに見つめていた夏樹は、目を細めて遙たちに手を伸ばす。
その瞬間、ぎゅう、と締め付けられる遙たちの心。