【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第7章 6Fr!『それぞれのObsession!』
帰りの車の中では、壮絶足るじゃんけんの末、見事助手席の座を勝ち取った遙が幸せそうに夏樹の隣を独占している姿を、後部座席に座る残りの4人が不満たらたらな顔で見つめていた。
「う"ぅ~~ズルいっハルちゃんズルいよ!!ハルちゃんっなっちゃんに触りすぎぃ!僕も僕も~!!」
「わっこら渚っ!?危ないから座っててっ」
「だってぇ~!」
目を潤ませ真琴に訴えかけてくる渚。
助手席へと乗り込もうとする渚を困ったような笑顔でなだめながら真琴は小さく息を吐きだすと、ちらりと視線を運転席へと向ける。
「___っ!!」
バックミラー越しに重なった視線に、ドキリと一際大きく跳ねる真琴の心臓。
ふ、と細められた夏樹の瞳に射ぬかれ、きゅんと締め付けられた胸を押さえながら、真琴はそっと視線を逸らした。
一方の遙は勝ち取った念願の助手席という一番の特等席に座りながら、幸せな想いを抱いていた。……もちろん表情には出ていないのだが。
「……。」
「……ん?何か嬉しそうだね。遙?」
「___っ!どうしてっ!」
何も言わずとも伝わっていた自分の感情。遙は恥ずかしいような嬉しいような気持ちを抱きつつ、目を見開きながら夏樹を見つめる。
視線の先の夏樹は顔は前に向けながらも柔らかな笑顔でちらりと視線だけこちらに向けていて。
ドクン
遙の心臓は大きく跳ねる。
どうしてこの人はこんなにも自分の心をかき乱すのか。
いつも最上限に達していると思っている夏樹を好きだという気持ちは、またしてもその上限をいとも容易く乗り越えていく。
「……夏兄の……隣が嬉しい。」
「…くすっ。こんぐらいで喜んでくれんならいつでもどーぞ。」
「………うん。……あ、夏兄…この後どうするんだ?」
信号が赤になり、車が止まる。
ゆっくりと夏樹の顔が遙へと向けられる。
「……そうだな。お前は……どうして欲しい?」
探るような妖艶な笑みを浮かべる夏樹。
急速に早まる心臓の鼓動は煩くて、やかましい。
「お、俺は……一緒にいたい。……夏兄と。」
揺れる遙の瞳に夏樹が映る。
「奇遇だね。俺と一緒だ。」