【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第6章 5Fr!『熱くなるFeelings』
合同練習を終え、着替えを済ました遙たちは、ついさっきまで一緒にいたはずの夏樹の姿が消えていることに気づき、辺りを見回していた。
「あっれぇ~~?なっちゃんどこ行っちゃったんだろぉ?怜ちゃん知ってる?」
「知りませんけど……。トイレとかじゃないんですか?」
「……うーん。夏兄ならそういうの一声かけてくれる気がするけど………俺、ちょっと探してくるから、皆先に出てていいよ。夏兄見つけたら一緒に向かうからさ。」
バッグを肩にかけながら笑顔を向けてきた真琴の提案に乗った遙たちは、先に校門へと向かうべく、歩いていった。
その背中を見送っていた真琴は、ふう、と小さく息を吐くと、改めて辺りを見回し目的の人物を探しに足を踏み出す。
(さて……とりあえずトイレからかな?早く見つけないと、皆心配するからな~。)
怜の言っていた通りにトイレへと足を向けると、曲がり角の向こうから聞こえてきた声に思わず動きを止める。
「___だからっ………俺は………好きなんだ。……夏兄のことが、今でもずっと………!」
突如聞こえてきた夏樹を"好き"だという凛の声に、ビクリと跳ねた真琴の体。
呼吸は浅くなり、心臓の鼓動は煩いほどバクバクと音をたて、指先の体温は下がっていく。
(凛が…………夏兄に…………)
凛の悲痛とも言える告白に夏樹は、うん、と返事をしたたけで、そのあとの言葉は続かない。
真琴は震える指先を握り締めながら、その続きの言葉を聞きたくないのに、足が動かず逃げ出せない状況に陥っていて。
「…………なぁ、………また……"アノ時"みたいに…………ほしいんだ。………俺を……夏兄で……」
徐々に消え入りそうに小さくなっていく声。
真琴は口の中がカラカラに乾き、たまらず唾を飲み込む。
(………凛………今…………何て…………?)