【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第6章 5Fr!『熱くなるFeelings』
凜と夏樹がプールサイドへと戻り、準備運動のストレッチをしていた時、既に泳ぎ始めていた真琴たちの泳ぎに、夏樹の視線が向けられていた。
前屈をしながらも、うんうん、と嬉しそうな笑みを見せ頷く夏樹の背中を押しながら凛は複雑な表情を浮かべる。
(…………こんなに、近くにいるなずなのに…………すげぇ遠くに感じる……。)
すると、触れている先の背中がむくりと起き上がり、プールの方に顔を向けたまま動きを止めた。
その視線の先にはプールの中、フリーを泳ぐ遙の姿。
「相変わらず綺麗だな…………俺、やっぱアイツのフリー好きだわ。」
視線を遙に向けたまま、とても愛しそうな声で呟いた夏樹に、凛の心の中はざわつくと同時に押し寄せてきた耐え難い焦燥感に、思わずその背中にすがり付いていた。
「……凛?大丈夫か……?」
すぐに心配そうに覗き混んでくる優しい瞳に映る不安そうな自分の顔。
凜は夏樹を前にすると自分が弱い存在であることを痛感させられるものの、自らの心を突き動かす強い想いに抗えない自分がいて。
「___夏兄………俺……っ……!」
凛が再び夏樹と視線を重ねた____その時、
ドッパン_____!!
水面に体がぶつかるような音が聞こえたと思った矢先、水の中で苦しげにもがく怜の姿。
「____っ!」
「はっ!?アイツ…―――!?」
瞬間、駆け抜けた風。
気づいた頃には綺麗なフォームで飛び込んでいった大きな背中が、怜の元へとたどり着き、体を抱き上げていた。
その傍には、夏樹と同じように飛び込んでいた遙が、その腕に手を添えていて。
「………っ嫌、だ…っ」
凜はやっと触れることが出来た焦がれていた大切な人の熱が、刹那消えてしまったことの恐怖から体が震えてしまい、今になって伸ばされた手が大好きな人の肌に触れることはなく、涙を浮かべ吐きだされた言葉は夏樹に届くことなく宙に消えていった。