【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第5章 4Fr!『戸惑いのheartbeat』
「……夏兄っ………夏兄……っ俺、………ずっと………!」
泣きそうな声ですがり付いてくる凛を優しく受け止めながら、夏樹は震えるその背中をポンポンと撫でた。
「大丈夫………。分かってるから……。でも、今は落ち着こうな?」
夏樹の言葉にハッとした凛は、周囲を見渡すと居心地を悪くしたようで顔を隠すように夏樹の胸へと顔を埋めた。
(夏兄の………匂い………。あの時のままだ………。)
そんな二人の様子を呆然と見つめていた遙たちは、立ち尽くしたまま動けずにいた。
(凛………夏兄と何かあったのかな……?)
凛のただならぬ様子に内心疑問を抱く真琴。
しかし、そんな空気をものともせず、切り込んでいく一人の男によって、凛は夏樹から離れざるを得なくなってしまう。
「あれ…?松岡何やってんだお前………って、待てっ!松岡よ………お前が今抱きついているお方の名前は何と言うのだ……?」
「………いや、その………この人は……」
歯切れの悪い話し方をする凛の背中をポンポンと撫でながら、夏樹は御子柴へと体を向き直すと、にっこりと微笑んだ。
「ご挨拶遅れました。岩鳶高校水泳部の付き添いで来ました、藤崎夏樹です。今日は真琴たちのことをよろしくお願いします。」
「___!?…なっ藤崎…… 夏樹………だと……?!ま、まさか……フリーで世界10位入賞した、あの……藤崎夏樹さん、なのでしょうか……?」