【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第5章 4Fr!『戸惑いのheartbeat』
「やぁ、よく来てくれたね!部長の御子柴だ。今日はよろしく頼むよ。」
目の前に現れたのはオレンジ色の頭をした長身の男。ジャージの上からも分かるほど鍛え上げられたその体に江の頬がほんのりと染まる。
「「「「よろしくお願いします!」」」」
一同が揃って挨拶を済ますと、御子柴は小学生時代の水泳大会での遙のことを知っていたようで、1人昔を思い浮かべながら語り始めていた。
その間、当の遙は、至極面倒くさそうに話を聞き流し、その様子を隣で見ていた真琴は困ったような表情になるも、話し手である御子柴はそんなことも気にせずに思い出に浸っているようであった。
「_____お。」
夏樹の視線の先、赤い髪をした青年がプールサイドへと入ってきたのが見え、夏樹は嬉しそうに目を細める。
「______夏兄…………?」
視線の先にいた赤い髪の男は、夏樹たちの存在に気づき、目を見開く。
「……?松岡先輩………?どうしたんですか?」
彼の隣にいた小柄な青年が尋ねるも、その声は彼の耳には届かず、赤い髪の男は夏樹から目を逸らせずにいた。
「………よぉ。久しぶりだな…………凛。」
夏樹がふわりと優しい笑顔をむける。
そのまま、凛に向かいゆっくりと両手を広げると、唖然とした表情のまま、ゆっくりと近づいてくる凛。
「………………おいで?」
自分に向かい柔らかな笑みをむける夏樹。
徐々に崩れていく凛の表情。瞳にはうっすらと浮かぶ涙。
「_______っ!!………………夏兄…っ!!!」
弾かれたように駆け出し、夏樹の元へと飛び込んでいく凛。
「……………元気そうで、良かった。凛……」
ぎゅうと自分の体を包み込んでくれる夏樹の熱と鼻を掠める彼の匂いに凛は胸が締め付けられるような感覚を覚える。