【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第2章 1Fr!『舞い戻ったblue』
TVに映る彼は記憶の中の彼よりも大人になっていて、顔つきはさらに格好良さを増して、夏樹本人が目の前にいるわけではないのに、真琴は顔を赤らめてしまった。
『おめでとうございます!フリーダイビング世界大会 コンスタント・ウェイト・ダイビング ウィズフィン部門にて、日本人初となる3位入賞をされました、藤崎夏樹さんです!! 』
『どうもありがとうございます!自分でもびっくりしました。』
そう話す夏樹は、太陽みたいな満面の笑みで、周りにいる人たちも吊られて笑顔になっていた。
『それにしても、20才という若さでの素晴らしい記録に合わせて、この抜群の容姿!!"海中のプリンス"という呼称にぴったりですね!!』
インタビューをしている女子アナウンサーは、可愛らしい仕草を交えつつ、夏樹に笑顔を振り撒いている。
夏樹は昔から女の人にアプローチされることが多く、この手の対応に慣れきっているが、正直見ている方としては不快極まりない。
『このコンスタント・ウエイト ウィズフィンというのはどのような競技なんですか?』
『はい。コンスタント・ウエイト ウィズフィンことCWTは、呼吸を止め、フィンをつけて自身の泳力だけで垂直に何メートル潜れるかを競う種目なんです。ジャック・マイヨールさんという方が、この種目の神と称されているのは、耳にしたことがある方も多いかもしれません。』
『ジャック・マイヨールさんはフリーダイビングを知らない方でもご存じな方も多いですよね?藤崎さんの196mも凄い記録だと思いますが、196mの深さで見える世界はどんな世界でしたか?』
『そうですね……寒くて、暗くて、音もない、水圧で肺が潰され苦しい……そんな中を進んでいくんです。そんな極限の状態で出会ったことがあるんです……………クジラに。』
『クジラですか?』
『はい。多分群れからはぐれちゃったんでしょうけど、1匹だけで泳いでたんです。そいつがね、寄ってきてくれて、一緒に沈んでいったことがあって………それからまたクジラに会えたらって……そんなことを考えてると、ふっと楽になる瞬間があって、その感覚が堪んないんですよね。ははっ』