【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第5章 4Fr!『戸惑いのheartbeat』
次の日になると夏樹は大学の講義のため、一度自分の家に戻るべく遙の家を後にした。
ついさっきまで同じ空間でニコニコと楽しそうに笑いながら朝食を食べていた彼が、今はいない。
そのことは遙と真琴にとって、耐え難い喪失感と寂しさを感じさせていた。
「じゃあね。また、明後日来るから。」
そう言い二人の額にキスを落としていった愛しい彼の熱はすでに消えてしまっていて
強く求めて手を伸ばしてもそこには何もない。
「………明後日かぁ………時間が流れるのって遅いね。」
学校へと向かう道を二人揃って肩を落としながら歩いていく。
「…………そうだな。」
禁断症状とは正にこのこと。
一度彼の甘い熱を知ってしまったら最後、
常に欲してしまう。
その熱を。
低く甘い声を、
整った大きな手を、
引き締まった筋肉質な体を、
俺たちのすべてを受け入れ愛しげに見つめる熱い瞳を___
もう足りないんだ。
もっと、もっと。
貴方が欲しい。
_______
放課後になり、プールサイドに集まった遙と真琴と渚は、ため息混じりに修復も残りわずかとなったプールを見つめていた。
「………昨日は、夏兄もここにいたんだよね…。何か正直、都合のいい俺の夢だったんじゃないかなって思うよ。」
「せっかく会えたのにまた会えないなんて~!やだやだ~!!」
子どものように駄々をこねる渚。
真琴はそんな渚の頭をぽんぼんと撫でながら困ったような笑顔を見せている。
遙はぼんやりとプールを見つめながら、夏樹のことを思い出していた。
(……今頃、何をしているんだろう。………逢いたい。……夏兄…)
それぞれが同じ人を思いアンニュイな様子になっていたとき
「皆さーんっ!」
プールサイドに駆け込んできた江の姿に3人の視線が集まる。
「江ちゃん!どうしたの?そんなに慌てて。」
江は走ってきたためか荒くなった息を整えながらゆっくりと口を開いた。
「鮫柄学園の練習に混ぜてもらえることになりました!!」