【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第4章 3Fr!『止められないimpulse』
二人を握る手に力が籠る。
目の前の夏樹はとても穏やかな顔で笑っていて。
「海での練習の合間に連れていってもらったんだけどさ、やってみたら自分って存在が海の中に溶け込んでいくような感じがしたんだ。そう思うとだんだんと感じてくる水圧も水の冷たさも、自分が海そのものになってるみいで不思議と心地よかったりしてね」
まるで今それを感じているかのように心地良さそうに微笑む夏樹の姿に、遙と真琴は釘付けになってしまう。
「……で、俺が海になってる~って漂ってたらさ、一匹のザトウクジラが現れたんだ。ソイツとね目があったとき、何かよくわかんないけど"夏樹"って呼ばれた気がしたんだ。……おかしいだろ?でも、そのときはそうとしか思えなくてさ。そのままクジラと並んで泳ぎながら沈んでいったんだ。………あれは本当、幸せだったよ。」
そう語る夏樹の目はどこか遠くを見つめていた。
「プールの水も好きなんだけど…一度フリーダイビングの楽しさを知っちゃってからは、物足りなくて。壁に囲まれてることすら窮屈に思えてきてさ、あぁ、もうここは俺の居場所じゃないって思ったんだ。」
遠くを見ていた瞳が目の前の真琴と遙を捉える。
その熱い思いの籠った視線に二人の心が震えていた。
「………ごめん。お前たちと違う道を選んでしまって。…………ただ、俺もお前たちと同じように泳ぐことが好きなことは変わってない。道は違えど、また一緒に泳ぎたいしな。」
夏樹の言葉に真琴と遙の瞳が揺れる。
目の前の大好きな人は、見た目こそ大人の男へと変わっているが、中身は以前のままの自分達がいつも憧れて、恋焦がれて、胸を熱くさせられた人そのままで
「夏兄…………俺、また夏兄と泳ぎたいっ!」
「……俺もまた夏兄と泳ぎたいんだ!」
「………うん。泳ごう。………で、海にも潜りに行こうぜ?」
太陽みたいな笑顔で笑う夏樹に、二人も笑顔になっていく。