【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第4章 3Fr!『止められないimpulse』
「……ありがとう。待っててくれて、本当にありがとう。寂しい想いをさせた分、今日からはいっぱいいーっぱい甘えさせてやるからな!遠慮は不要っ!」
弾けるような笑顔を向けている夏樹に抱きつきたい衝動に駆られる遙と真琴だったが、目の前にある食事たちがその行く手を阻む。
しかし、このフラストレーションすら、目の前にいる男にとっては受け止めるに苦は感じない、それが夏樹なのだ。
「夏兄……」
言い淀む遙。
夏樹は遙の言いたいことがわかるかのように、"大丈夫だから言ってごらん"という風に頷いて見せる。
「………競泳…………辞めたのか?」
寂しそうな色に染まる遙の瞳がまっすぐに夏樹を捉える。
「………うん。今は、もう……やってない。でも、泳いではいるんだけどね。」
夏樹の言葉に遙と真琴の目が震える。
彼らにとって、夏樹が泳ぐ姿は自分達の憧れであり、目標であった。
その彼が競泳を辞めたということは少なからず二人の心に影を落としていた。
「そっか………何か寂しいね。……結構好きだったんだよねぇ。夏兄が泳いでるの見てるのも………」
「…………夏兄が……フリーを泳いでいたから………俺はフリーを好きになったんだ………」
二人の言葉に眉を下げ、困ったようにはにかみながら、夏樹はゆっくりと語り始めた。
「俺さ………今でも好きだよ。競泳。」
夏樹の言葉に体を前のめりにした二人。
それを見た夏樹は手招きをすると、二人を自分の目の前に座らせた。
そして、繋がれた3人の手。
「高校から水泳留学して、アメリカではコーチの元、めちゃくちゃ練習してさ。毎日吐くほど泳いだりしてたから、記録も伸びてさ、こう見えてもフリーでは世界記録10位まで行ったんだぜ?……で、何となくこれからもスピードの世界にいるのかなって思ってたんだけどさ、……………出会っちゃったんだなぁ………フリーダイビングに。」