【Free! 】僕らの大好きなあの人は海のような人でした。
第4章 3Fr!『止められないimpulse』
耳のすぐ傍で聞こえる夏樹の低い声は、遙の全身にゾクゾクと甘い電流を流した。
遙はちらりと夏樹を覗き見るが、その瞬間いつもより少し熱の籠った目とぶつかり、ドクンと胸が跳ね上がった。
「………夏兄…?」
耳元をクスリ、と笑う夏樹の吐息が掠める。
たったそれだけでじわじわと熱を帯びていく遙の体。
「クス…何で、俺だってわかっちゃったの?………残念。」
「匂い……。……夏兄の……匂いがした。」
「俺の………?えっそれって汗臭いとかじゃないよなっ!?」
慌てて自分の匂いを嗅ぎ始めた夏樹。
それを見ていた遙はくすり、と笑う。
「いや、香水の匂い。」
「あー……なんだ。香水か………うん。安心したわ。」
遙の返答に胸を撫で下ろした夏樹は、遙の手元を覗きこんだ。
「お、いい匂いすんなーって思ったら鯖じゃん!俺、魚の中だったら鯖が一番だな~。」
勢いよく夏樹の方を向いた遙の目はキラキラと輝き、ぎゅうと自分の服を掴む姿に夏樹は柔らかな笑みを見せる。
「……俺も………好きだ!」
「………くすっ……じゃ、俺と一緒だな?」
みるみる染まっていく遙の顔は気がつくと真っ赤になってしまった。
そして、少し俯いたまま黙り混んでしまう。
「………昔………夏兄が、鯖は体に良いって、言ってたから。」
「え、……俺が?………あ、思い出した。俺が中1の時だな。それ。」
「…………っ!…そう!」
遙はとても嬉しそうに目を輝かせながら、そっと夏樹に体を寄せると、すぐに夏樹の大きな手が遙の頭を撫でた。
「もしかして………お前、俺に言われたから今も食べてたり………?」
夏樹が悪戯な笑みで遙の顔を覗くと、未だ赤く染まったままの遙の瞳が揺れる。
「…………///。」
___きっと、この無言は"肯定"の証。
夏樹はそんな遙を愛しげに見つめると、額にかかる遙の髪をかけあげ、開けたそこにキスを落とした。